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親日家のジム・ロジャーズ
 


<日本経済の将来を「全否定」する天才ジム・ロジャーズ>
 

日本は素晴らしい国だが、投資はできないと、

投資の天才ジム・ロジャーズは言っています。



ロジャーズは、「私たちのような投資家にとっては良いかもしれないが、

長期的に見れば、このような政策は破たんを招く」と言って譲りません。


『金銀の貯金箱人気金貨』

  
 
 
 
 

金銀の貯金箱 ロゴ

 

『THE WALL STREET JOURNAL』に掲載されたロジャーズの発言が以下です。

Q: 日本についてはどうか?

A: 日本株は相場が上昇した後の5月に売却したが、それでも少し早過ぎたかもしれない。
というのも、これだけの流動性があれば日本株はもっと上昇し得るからだ。
パーティー会場を後にした後、そこに戻るべきか否か考えていたが、自分が疑わしいと思っていることに関わって良かったことはあまりない。

Q: 日本にとっての長期的な問題とは何か?

A: 日本の根本的な問題は人口動態だ。移民を受け入れたり、出生率が上がったりすれば、日本はとても魅力的になり得る。しかし、そうはなっておらず、財政出動もやめなければならない。
日本は世界最大の対内債務国だが、安倍首相はさらに政府支出を増やすつもりだと言う。
この10年間ほど、世界中の政治家たちが、過剰債務という問題をさらなる債務で解決すべきだと言っていることに私は驚がくしている。

別に、日本政府は「債務問題をさらなる債務で解決しよう」とは一言も言っていません。
しかしロジャーズは、最初からアベノミクスの本質を見抜いていました。

私たちは、政府筋の情報や経済学者よりも、投資家から情報を収集すべきです。
このような本質を見抜く力がずば抜けているため、ロジャーズは成功してきたのです。

あと、ちゃっかりアベノミクス相場の初動で儲けたことを告白していますね。
実は、ジョージ・ソロスもまったく同じ行動を取っていました。

2013年、アベノミクスの量的緩和政策による円安相場で10億ドルの利益を得ました。
また同年にクォンタム・ファンドは、55億ドルもの利益を上げました。これはヘッジファンド史上最高額であるといいます。

一流の投資家は、こういうチャンスを絶対に見逃しません。

2014年11月12日、日本経済新聞に「安倍首相の施策は日本を破壊」という、少し過激なタイトルの記事が掲載されました。次にその一部を引用します。

Q: 日銀が追加的な金融緩和を発表するなど、アベノミクスを巡る新たな動きが目立ちます。どのように評価していますか。

A: 安倍首相の施策は日本を破壊している。日銀による追加的な金融緩和はさらに円安を進めて市場を喜ばせ、安倍氏の再選を狙うものだろう。
私のような投資家や、一部の輸出企業には良い。だが、若者をはじめとする大半の日本人には悲惨なことだと思う。
日本は対外的には債権国だが、対内的な巨額の債務を賄いきれなくなっている。なのにもろもろのコストは上がり、生活水準が低下するからだ。

歴史的にみても、自国通貨安で本質的に経済が救われた例はない。
欧州や南米の様々な国が試みたが、一時的な刺激にはなれど長期的には成功しなかった。
年金資産の運用見直しや少額投資非課税制度(NISA)導入など、投資家にとって良い政策もあった。

だが、大きな流れを誤っており、あの時にお札を刷りすぎて問題を深刻にしたのだと10年後に振り返ることになるのではないか。

「自国通貨安で本質的に経済が救われた例はない。欧州や南米の様々な国が試みたが、一時的な刺激にはなれど長期的には成功しなかった」
この点はとても重要でしょう。

歴史的なデータを重視するのが、ロジャーズの思考法です。結局、人類の歴史は同じことを繰り返している、という主張が根底にあります。
バフェットもロジャーズと同じように「歴史」に着目しています。

「我々が歴史から学ぶべきなのは、人々が歴史から学ばないという事実だ」とは、ウォーレン・バフェットの言葉です。

こうして過去の発言を振り返ると、ロジャーズは日本のことが嫌いなのか!? と感じてしまいますが、別にそういうわけではありません。
むしろ、ロジャーズは日本のことが好きで、来年、2人の娘を日本に連れてくる予定だと楽しそうに話していました。

ロジャーズが嫌っているのは、日本政府や企業の「過剰な債務」です。

Q: トランプ大統領の誕生で世界経済はどう変わりますか。

A: 一喜一憂をするべきではない。トランプ氏が大統領になったからといって世界経済のファンダメンタルズが大きく変わるわけではない。
問題は世界の国々が借金を抱えすぎたため経済成長にブレーキがかかり、今の世代が親世代より豊かになれなくなっていること。その子ども達は、さらに豊かになるのが難しい。

こうした状況の中、世界中の人々が不満を抱えており、そこにシンプルな答えを掲げた人が白馬の騎士のように現れて『救ってあげよう』と言えば、誰もが熱狂してしまう。

米国だけでなく欧州やアジアなど、世界中で同じことが起きている。しかしそれで解決するほど問題は単純ではない。一人の指導者に過剰な期待を持つべきではない。

驚くほどの勢いで、債務残高が積み上がっています。
日本の232.4%という値は、世界で最もGDPに比べて債務が大きくなっています。
2001年の144.4%という数字ですら、ましに見えてしまうほどです。

また米国の債務残高(対GPP比)は、2001年にはたったの50.7%でした。それが今や111.4%に達しています。
日本、米国、英国、フランス、イタリア、ギリシャの6ヵ国は、債務の膨張が止まらなくなっています。

このような状況を受けて、ロジャーズは次のように述べているのです。

Q: 2017年、世界経済はどう推移するでしょうか。

A: 心配だらけだ。中国が債務国になるだろうし、欧州では政治的な混乱が避けられない。おそらく、いくつかの国、いくつかの大企業が破綻するだろう。サプライズの多い年になる可能性があるように思う。

では、そもそも、なぜ政府の債務膨張は止まらなくなっているのでしょうか?

<日経平均株価(年次)>
2012年 10,395円
2013年 16,291円 (前年比 +56.7%)←アベノミクス開始
2014年 17,450円 (前年比 +7.1%)
2015年 19,033円 (前年比 +9.0%)
2016年 18,426円 (前年比 +3.1%)

<日本 名目GDP/名目経済成長率>
2012年 475.3兆円
2013年 479.0兆円 / +0.7%
2014年 486.8兆円 / +1.6%
2015年 499.2兆円 / +2.5%
2016年 504.9兆円 / +1.1%

<日本政府 一般会計税収の推移>
2012年 43.9兆円
2013年 47.0兆円 (前年比 +7.0%増)
2014年 54.0兆円 (前年比 +14.8%増)
2015年 56.4兆円 (前年比 +4.4%増)
2016年 57.6兆円 (前年比 +2.1%増)

<日本政府 及び地方の債務残高の推移> 
財政関係基礎データ(平成28年4月)財務省が発表
2011年 894兆円
2012年 931兆円
2013年 971兆円
2014年 1000兆円
2015年 1040兆円
2016年 1062兆円(予想)

出展(財務省ホームページ)
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201604/index.htm

主要国の一般会計、公債依存度、利払費及び長期政府債務残高等の対GDP比
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201604/sy2804l.pdf

2015の実績
税収 59兆円
歳出 99兆円
収支尻 △ 40兆円の赤字

公債依存度 40%
GDP 503兆円
政府債務残高 874兆円
地方債務残高 198兆円(一部重複)

https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201604/index.htm

<ロジャーズが語った「不都合な事実」>

前述のようにジョージ・ソロスは、このアベノミクスを活用して10億ドルもの利益を上げました。
ロジャーズも同様にアベノミクスを活用して儲けたことを明かしていましたが、2014年のインタビューでは次のようにも話しています。

現実をよく見れば、1億人を超える日本人のほとんどが幸せにならずに、一部のトレーダーや大企業だけが潤っている。
それが果たしてよい政策といえるでしょうか。

安倍首相の答えは「イエス」でも、多くの日本人にとっては「ノー」でしょう。

3月11日の会見で、日本銀行の黒田東彦総裁は慌てて否定をしていましたが、いま日銀が追加の金融緩和をするのではないかと囁かれています。
これも馬鹿げた話です。

追加緩和を実施すれば株価が上がるので株のトレーダーはまた大喜びするでしょうが、多くの日本人にとってはコストアップという形でより首を絞められることになるだけです。

追加緩和への期待感がマーケットでしか騒がれていないことが、いかにも象徴的です。

ここでロジャーズは、彼の立場であれば別に言わなくても良いことまで、正直に話しています。

国民の大半が儲けられず、一部のトレーダーや大企業だけが儲けても、「税収増」には直接繋がりません。「質的金融緩和」は、資本家や投資家のためにはなりましたが、国民生活の「質」は何ら向上しませんでした。

ピケティが導き出した「r>g」は、古代から続いており、政府も、古代から破綻を繰り返してきました。
ロジャーズの主張は、現在の経済システムの抱える根幹的な問題を指摘しており、解決が難しいという現実があるのです。

AI革命が本格化すると言われているのは2020年以降です。
今のIBMの業態が転換せず、株価が途中でバブル化しない限り、そのAI革命を見届けたいと願っています。

このホールド戦略をより強固なものにするためには、別の手段でのヘッジが必要だという考えに至ったのです。

ただ、保険とはいえ、例えば「日本国債ベアファンドを買います」と公言してしまっていいのかどうかは、迷う部分も正直あります。

「財政持続が不能になることに賭けている」のではなく、あくまで「単なる保険」であることを理解していただけると助かります。

そしてついに日銀は、「日経平均株価に連動するETFと不動産投資信託(J-REIT)を、それぞれ年間8兆円/900億円買い切る」という政策を実施し始めました。

このETF買い入れは、他国の中央銀行が一切手を出してこなかった「禁じ手」です。
従来の「量的金融緩和」と区別するために、「質的金融緩和」と呼ばれているものです。
しかしそんな禁じ手を使っても、名目GDPはそれほど上昇していません。

「借り入れの際の金は固定ですか?変動ですか?」と聞いたら
「全物件、変動金利ですよ(自信満々)」という恐ろしい答えが返ってきました。

もしかすると、ロジャーズが懸念している政府の債務残高の大きさと長期金利の変動を結び付けて考えていないのか…。

投資や経済について何も知らない人が「住宅ローンは変動金利です」というのはまだわかります(※しかし、その選択は間違いです)。現在のような歴史的な超低金利(政策金利が0%前後)の環境で、固定金利の支払いが大変なのだとしたら、元々の損益分岐点の設定を見直した方がよいのです。

固定金利に借り換えしておけば、有事の際には政府、企業、個人の持つすべての負債にリセットがかかって、逆に大儲けになります。そのため、普通の経済感覚の人は「固定金利」を選択しています。

負債を持っていない私でも、財政リスクの保険を検討しているぐらいなのに…。
不動産投資をしていて、賃貸経営をやっている専業の経営者で、さらにロジャーズの講演会まで聴きにきていて、なぜ変動金利を選択するのか?

自動車を運転していながら、「自賠責保険に入らない」という選択があり得ないことは言うまでもありません。

ジョージ・ソロスは、自身が投資家として成功したのは「再帰性理論」のおかげであると、自身の書籍の中で繰り返し述べています。ただ、「本当は哲学者になりたかった」というだけあって、彼の説明はとても難解です。
そこで今回はできるだけわかりやすく、ソロスの「再帰性理論」を解説していきます。 

<「本当は哲学者になりたかった」ソロスの再帰性理論を理解>

「投資家として成功できたのはこの理論のおかげ。」

ジョージ・ソロスは、書籍『ソロスの講義録』にて、次のように述べています。

私は危機(2008年のリーマン・ショック)を予測することができたのですが、それは「再帰性」の理論のおかげでした。また、危機が現実化した際の対処の仕方も、「再帰性」の理論のおかげで、わかっていました。

ソロスは、自身が投資家として成功したのは「再帰性理論」のおかげであると、自身の書籍の中で繰り返し述べています。

ただ、この理論は、私たちの間で広くは認知されていません。
その原因の1つは、哲学者を目指していたソロスの非常に難解な文章にある(=なかなか伝わってこない)、というのが私の個人的な見解です。

そこで本稿では可能な範囲でわかりやすく、自作の図解も示しながら、ソロスの「再帰性理論」を解説していきたいと思います。

<ソロス「市場は常に間違っている」の真意>

ソロスの言葉の中で最も有名なのは、「市場は常に間違っている」だと思います。一見、単純でわかりやすい言葉ですが、ソロスの真の意図はかなり深いところにあります。

なぜ、ソロスは「常に」と言っているのでしょうか?

いわゆる「適正株価」と呼ばれる、企業の実態と株価が釣り合っている時もあるはずです。それをなぜ「常に間違っている」と言い切れるのか?
ここに、ソロスの説く「再帰性理論」の神髄が隠されています。

この「再帰性」を理解するにあたっては、まず「可謬性(かびゅうせい)」という考えを前提に市場と向き合わなければいけない、とソロスは言います。

「可謬性」は哲学の用語なので、普段、耳にすることはほとんどありません。「謬」とは「間違うこと、過ち」の意です。ここでは、可謬性という用語を「人は誤解しうる」という意味で捉えてください。

ソロスは世の中に存在する事象を、次の2種類に分類しました。
◾自然現象……(例)雨が降っている
◾社会的事象……(例)Z社の株価が大暴落して割安になった

「雨が降っている」という自然現象は、人間の思考とは無関係に発生し、思考が原因の役割を果たすことがありません。
観察者であるAさんとBさんが同じ場所にいるとき、「雨が降っている」という現象には関与できません。
2人に天気を変えることはできないし、AさんとBさんで解釈が異なることもありません。

一方、「Z社の株価が大暴落して割安になった」という社会的事象には、人間の思考が入っていて、人間がこの現象をコントールもできます。
次の日にAさんは割安になったZ社の株を買うかもしれないし、Bさんは逆にZ社の株を信用売りするかもしれません。

このような「社会的事象」に対して、ソロスは「自然現象」にはない特徴を発見したのです。
それが「可謬性」です。

「雨が降っている」という自然現象は、誰が解釈しても動かせない事実であり、「可謬性」は入ってきません。
ところが、「Z社の株価が大暴落して割安になった」という社会的事象は、人間という参加者がそこにいて、その参加者たちの解釈と行動によって生じるものです。

社会の参加者である人間は、社会のすべての情報を知っているわけではなく、常に一部の情報をもとに判断しています。Z社に関する情報を100%、知っている人はいないのです。

従業員、経営者、株主、顧客…それぞれの立場で持っている情報が異なります。そのため、「社会的事象」には、人間の誤解や間違いがもともと入っているのです。
反対に、「自然現象」には人間が参加者として加わっておらず、人がいなくても、雨が降ったり風が吹いたり気温が上がったりします。

この「可謬性(=人は誤解しうる)」が、ソロスの「再帰性理論」の基礎になっています。

<再帰性には「永久ループする特性」がある!>

社会的事象には、自然現象と違って人間が参加しています。
そのため、すべての社会的事象には「再帰性」が伴っていることをソロスは見抜きました。

「再帰性」とは文字通り、「再び帰ってくる性質」のことです。
ソロスは、再帰性の特徴を次のように説明しました。

「私は嘘つきだ」と宣言したとすると、哲学的には次のように解釈されます。
私は嘘つきだと言う人が嘘つきならば、本当のことを言ってるので正直者となるように思うが、正直者が私は嘘つきだと言うのは嘘つきなので嘘つきになるが……(文頭に戻る)

「自己言及のパラドックス」と呼ばれる現象で、この命題は永久にループします。
世の中は、黒か白かを明確に判定できるものばかりではなく、このように永久ループに陥るものもあります。
なぜ永久ループになるかというと、定義している命題に「自己参照」が含まれるからです。自己参照するものは、いつまで経っても答えが出ずに永久ループとなります。

社会的事象は、人間がその社会の中に入っているため、「自己参照」になっていることをソロスは発見しました。「私は嘘つきだ」という命題のように、命題の中に自分自身を定義してしまうと「永久ループ」が生じますが、それと同じことが社会的事象にも生じるというのです。

<人間の持つ2つの機能>

まず、人間には次の2つの機能が備わっています。
◾認知機能……人間が世界を知識として理解しようする機能
◾操作機能……人間が世界に影響を与えようとし、改造しようとする機能

ソロスは、この2つの機能が相互に作用しあって永久ループするため、現実が歪められていることを見抜きました。次の2つの式をよく見てください。
◾<認知機能の式>f(現実)⇒認識
◾<操作機能の式>g(認識)⇒現実

人間は現実を認知して、現実とはこういうものなんだと認識します。その認識をもとに、操作(行動)を取って、新しい現実を生み出します。

ここで、注目すべきは、「操作機能によってアウトプットされた現実が、認知機能のインプットになっている」という点です。

これは「私は嘘つきだ」の命題のように永久ループしています。
◾f(嘘つき者)⇒正直者
◾g(正直者)⇒嘘つき者

「私は嘘つきだ」と言うのが本当なら、私は正直者です。正直者が「私は嘘つきだ」と言うのなら、私は嘘つき者になります。答えのない永久ループになります。

「卵が先か?鶏が先か?」においても、同じように自己参照によるループになります。
◾f(鶏)⇒卵
◾g(卵)⇒鶏

世の中には白か黒かを判定できずに、ずっとループに陥る命題もあると、私たちは捉えなければいけません。

人間が参加する社会的事象では、認知機能と操作機能は相互に干渉しあってしまうために、永久にクルクルと回り始めてしまいます。自然現象には人間が参加していないため、このような再帰性は生じません。

<フィードバック・ループの正と負の性質>

永久ループというと、同じところをクルクルと回っているようなイメージですが、正確には異なります。

社会に参加している人間は、「本当の現実」を誰もわかりません。現実という全体の中の一部として人間が参加しているため、現実全体を把握できないのです。

そのため、認知機能にインプットしている「現実」は、正確に言えば「現実」ではなく「現実’」となります。

ソロスはさらに洞察を進めて、再帰性のループには、次の2種類の方向が存在することを発見しました。

<負のフィードバック>
参加者の現実に対する見方が現実の状況に接近するという性質

<正のフィードバック>
参加者の現実に対する見方が現実の状況から乖離・拡大するという性質
正と負のイメージが湧きにくいかもしれません。正はプラスで、負はマイナスです。
次のようにイメージしましょう。

<負のフィードバック>
「本当の現実」という円の大きさに対して、人間が認知した「現実’」の円の大きさが近づいていく現象

<正のフィールドバック>
「本当の現実」という円の大きさから、人間が認知した「現実’」がどんどん大きくなっていく現象

ソロスはこの2種類のフィードバックを、次のように考えました。
◾負のフィードバックは自己修正的で、いつまでも続くことが可能である。
◾正のフィールドバックは自己強化的でどんどん拡大していき、永続的ではない。やがて事象の参加者の認識が限界に達してしまう。

そしてソロスは、正のフィードバックは「バブル構造」そのものであると見なしました。
最初は自己強化的にどんどん大きくなり、最後は自己破壊的に転ずるのは、金融市場におけるバブル構造そのものというわけです。

<ジョージ・ソロス発案「再帰的な株価モデル」の8段階>

ソロスは再帰性理論をベースに、正と負のフィードバックが起きることも考慮して、株価モデルを発案しました。
それがこちらです(書籍『ソロスは警告する』P125〜126より引用)。

<第1段階>
第一幕、つまり初期段階では、このトレンドはまだ理解されていない。

<第2段階>
続いて訪れるのが、加速段階である。その時にトレンドは理解され、市販的なバイアスによって強化される。この時点で、すでに株価は均衡水準から懸け離れてしまっている。

<第3段階>
その後、試練の段階がやって来て、株価は一時的に下落する。

<第4段階>
確立期。もしもバイアスもトレンドもこの試練を克服すれば、どちらもかつてないほど強くなり、結果的に均衡から懸け離れているはずの株価が、しっかり確立してしまう。

<第5段階>
だが、いずれは誇張された期待を、もはや現実が支えきれない正念場がやって来る。

<第6段階>
次が「黄昏(たそがれ)の期間」で、ゲームに参加し続けている者たちも、自分たちのやっていることの危うさに気づいている。

<第7段階>
とうとう転換点に到達し、トレンドは一気に下向きになり、バイアスも逆転する。

<第8段階>
その後に発生するのが「暴落(クラッシュ)」として知られる、破局的な下向きの加速だ。

<ソロスによる効率的市場仮説への反論点>

(1)
全ての人間が本当の現実を理解できず、現実の一部しかわからないので、「現実’」として解釈している(社会的事象には可謬性がある!)

(2)
社会的事象は人間の持つ認知機能と操作機能が相互に干渉しあって現実に影響を与えながら、自己強化的に現実を歪めていく(社会的事象には再帰性がある!)

(3)
現実と人間との再帰的なループにより、現実が歪んでいき、本当の現実と現実’が大きく乖離して、時にバブルとなる。

(4)
バブル崩壊の過程では、株価は上昇する速度よりも下落する速度の方が速く、株価は実態よりも大げさに動く傾向がある。

(5)
「株価は常に全ての情報を反映している」わけではなく、再帰的に繰り返される正と負のフィードバック・ループにより、実体と株価は離れたり近づいたりを繰り返している。

ジョージ・ソロスの言葉「市場は常に間違っている」は、次の2つの原則に集約されます。

<金融市場の2大原則>

第1の原則
「市場価格は、その根本にあるファンダメンタルズを常に歪めるものである」

第2の原則
「金融市場は根底にある現実を反映するだけの受け身の存在ではなく、積極的な役割をも果たしている」

この2つの原則は、本稿で解説した「再帰性理論」から導かれたものです。

株価はランダムに動いているわけでも、ファンダメンタルズを完璧に反映しているわけでもありません。効率的市場仮説が間違っていて、社会的事象に再帰性があるからこそ、逆に私たちにもチャンスがあると言えます。

<個人でとれる対応とは>

個人が取れる対策は?・・・金貨や銀貨などの金現物を持つ

金、不動産に限らず、資源含め、全ての物価が上昇するが、「無国籍通貨」「究極の通貨」とも呼ばれる金貨は、ハイパーインフレになれば、一番需要が高まる実物資産の一つと言えることは間違いありません。 ※実際に最近ではイギリスのEU離脱で3年ぶりの金相場上昇に拍車がかかりました。経済に不安があると金相場が上昇する傾向があります。

現代は、外貨(ドル、ユーロ、ポンド、フランなど)や外貨建て投資商品を簡単に購入できるので、外貨や外貨建ての金融商品に資金が向かうことも考えられますが、手元で保有できるという意味では、金・金貨に勝るものはありません。外貨などは、銀行に預けていても有事の時には引き出せない可能性もあります。

<ハイパーインフレに備え、金貨などで貯金>

1オンス金貨などは財布の中にも入れられる上、世界中で換金が可能です。
金貨は、金の延べ板よりも気軽に持つことができます。

「お札が紙くずになる日がくるかもしれない」と聞き、まさかそんなはずはないと考える人も少なくないでしょう。
しかし、世界では既にそのようなことが現実になっている国はあります。
国の通貨は政治状況によっては価値を持たないものになってしまう可能性があるのです。
また、金融機関が破綻した場合、預金者は「1000万円を超える預金は保護されない」というペイオフ制度もあり、自分の預金に危機感を持たなければいけない状況になっています。

ハイパーインフレに備え、金地金や銀貨、金貨などで貯金を始める方は増えています。
金貨や銀貨などの貴金属は世界共通の価値を持ち、インフレにも強いと言われています。
紙くずと変わってしまうお金よりも確実な貯金をするなら、金貨による貯金がおすすめです。

<備えることの大切さ>

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